自分で商売すると、お金について考えないでいられることがない!という方がほとんどだと思います。
業者への支払い、給料の支払い、家賃の支払い、銀行への返済、次々とお金がでていくのに、売掛金がまだ入ってこない!次の仕事はまだか!おいっどうする?・・・
お金の心配から開放されたら楽だろうな・・・
何人の方がうなずいていることでしょう。
私は税理士ですから、お金の面からの安心安全を少しでも与えられること、それが私の使命だと考えてます。
だから、口うるさいようですが、計画をたてましょう!計画に対して現状どうなのか確認するためには早く経理処理をこなしていきましょう、数字をしっかり自覚して対策を考えましょう!
いろいろ言わせていただきます。
お金のことをあれこれ考えなければならない現実。
仕方がありませんよね。経営者は。
しかし、京セラ創業者:稲盛さんは「仕方がない」と考えては駄目だとおっしゃっています。
稲盛和夫さんの名著「実学~経営と会計~」には、とっても心に刻まれる素晴らしい言葉がふんだんに盛り込まれておりますが、特に私の好きな部分をご紹介したいと思います。
お金についての考え方、目指すべき経営者像について思いを馳せていただければ幸いです。
土俵の真ん中で相撲をとる
お金のことを常に心配していては仕事ができない。そのため、ぎりぎりの資金繰りは決してしないようにしなければならない。手形が落ちないといって必死に金策に走り回り、ようやく手形を落とし、あたかもすごい経営努力をしているかのように思い込んでいる人がいる。しかし、常に金策に走り回って自転車操業をしているようでは、本当の経営を行っているとは言えない。マイナスの経営を、やっとのことでプラスマイナス・ゼロの水準に戻しただけのことである。
京セラは創業して間もないころ、私は松下幸之助氏の講演を聞く機会があった。その講演のテーマは「ダム式経営」というものであった。幸之助氏は会社を経営する際、ダムをつくることで川がいつも一定の水量で流れているように、「ダムの蓄え」を持って事業を進めていかなけれならないと説かれた。話のあとの質疑応答の際に、聴衆の1人が「どうやったらそのような余裕のある経営ができるのでしょうか?」と尋ねた。
幸之助氏は「その答えは自分も知りません。しかし、そのような余裕のある経営が必要だと思わな、あきませんな」と答えた。聴衆の多くは、この答えに笑ったが、私はこの言葉に深く心を動かされた。
何かを成そうとするときは、まず心の底からそうしたいと思い込まなけれはならない。
「わかってはいるけれど、現実にはそんなことは不可能だ」と少しでも思ってしまったら、どんなことも実現することはできない。どうしてもこうでなければならない、こうしたいという、強い意志が経営者には必要なのである。
このダム式経営と同じ趣旨で、私がよく使う言葉に「土俵の真ん中で相撲をとる」というものがある。土俵際ではなく、まだ余裕のある土俵の真ん中で相撲をとるようにする、という意味である。
土俵際に追い詰められ、苦し紛れに技をかけるから、勇み足になったり、きわどい判定で負けたりする。それよりも、どんな技でも思い切ってかけられる土俵の真ん中で、土俵際に追い込まれたような緊張感を持って勝負をかけるべきだ、ということである。これは企業財務に関して言えば、「常にお金のことについて心配しなくても、安心して仕事ができるようにすべきだ」ということであり、そのような強い思いが、京セラを早い時期より無借金経営に導いたのである。
世の中の経営者には銀行から借金して、それを元手に事業を急速に拡大していく方が良いと考えられる方が多いであろう。しかし、最近の貸し渋り問題を見てもわかるように銀行は「天気の良い日には傘を貸すが、雨が降れば傘は取り上げる」といわれている。酷な話に思えるが、お金を貸して取りはぐれたのでは銀行の経営が成り立たないので、雨が降ったら借りた傘は取り上げられるというのは当たり前と考え、どんなときでも自分の力で雨に濡れないようにしておかねばならない。つまり、土俵の真ん中で相撲をとるような経営をつねに心がけていなければならないのである。
中省略
・・・安全に経営をしようと思えば、減価償却プラス税引後利益で返せる範囲のお金でしか設備投資をしてはならないことになる。
私がとにかく借金はできるだけ早く返そうとしたために、比較的早い時期から京セラは自己資本の比率を高くすることができた。具体的には、創業より15年目で、総資産に占める自己資本比率を70%近くまで高めることができた。
これは、自己資金を蓄積し、それをもとにさらに大きな自己資金が生み出せるような経営を進めるという「キャッシュベースの経営」の結果であると考えている。