先に結論
- 退職金の支払いは会社において法人税の節税となります。(しかし、多額のキャッシュフローアウト{資金流出}を伴う)
- 退職金の準備(積み立て)を毎期の経費(損金)にできれば、支払う事業年度だけでなく、バリバリと働いている事業年度からずっと節税することができます。(結果的に、毎期の法人税支出を退職金に上乗せすることができるわけです。)
なおかつ、支払事業年度の資金繰りに負担をかけずに済みます。
(退職金準備{積み立て}として利用できる制度)- 小規模企業共済<月額限度額7万円「年間84万円」>
- 長期平準定期保険
- 養老保険(基本的に全員加入)
- 厚生年金基金などの公的年金制度
- 退職所得は所得税の軽減措置がとられているので、節税した法人税が取り戻されることがない!これがミソであります。
- 注意したいのが、法人側として、いくらでも支払える(損金になる)訳ではないということ。過大な退職金は否認される可能性がありますので、そのことを念頭において計画をたてる必要がありましょう。
- 退職金は、たった一度だけ、ではありません。役員という立場と使用人という立場の変化においても使えます。
また、分社化という手法を使うとこの美味しい制度をより美味しいものにすることも可能です。が、しかしこのためだけに会社をどんどん作っていくのは本末転倒ですし、他に影響するデメリットが顕在化してくることにも注意が必要です。
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(解説)
会社から退職金を支払えば、それは経費(損金)となるので法人税の節税にはなるものの、多額のお金(退職金)を個人が受け取ることになるので、法人税は安くなっても結局個人側でたっぷり所得税がかかるのではないか?あまり意味がないのではないか?と考える方もおられるかもしれません。
そこで、まず退職金の税金(所得税)計算の仕方について説明します。
退職所得(課税所得)=(退職金-退職所得控除)×1/2
退職所得控除は、勤続年数によって変わります。1年目から20年目までは、毎年40万円ずつが累積されて控除されます。21年目以降は、毎年70万円ずつ累積されます。
例えば、30年間働いた会社からもらう退職金に係る退職所得控除は、40万円×20年+70万円×10年で1500万円となります。つまり1500万円迄は税金がかからないのです。
さらに言えば、退職所得控除後の1/2というのも大きい要素ですし、分離課税であるということもかなり有利だと思います。(分離課税とはその他の所得金額と合算することなくそれだけの金額に税率を乗じて計算すること。その他のほとんどの所得はすべて合算する総合課税となっている。合算されて金額が大きくなればなるほど税率が高くなる累進税率システムから外してくれているわけです。)
事例計算をしてみましょう。
奥様を入社させて(勤務実態があることが前提です。)、会社で節税目的による退職積立保険(月額保険料5万円:返戻率100%)に加入したとします。で、10年後に退職したら・・・。
★会社での節税額(毎年黒字だとする)
5万円×12ヶ月×10年×実効税率約40%=240万円
★退職金にかかる税金(個人)
(600万円ー退職控除400万円)×1/2×15%=15万円
差し引きで、225万円の節税効果があるわけです。